「ECモールに出店すれば売れる」は危険|販路開拓の前に整理すべきこと

経営戦略 上越妙高 Management

「売上を増やすためにECモールへ出店したい」「新しい販路を開拓したい」。中小企業では、このような相談は珍しくありません。しかし、相談内容をそのまま経営課題と捉えるのは危険です。話を掘り下げると、販路ではなく生産能力や人手不足が成長を妨げていることもあります。重要なのは、目の前の施策を考える前に「本当の経営課題は何か」を見極めることです。

本記事のポイント

  • 相談内容と、本当に解決すべき経営課題は同じとは限らない
  • 売上拡大の前に、生産能力など経営上の制約条件を確認する
  • 経営戦略とは、限られた経営資源の配分と優先順位を決めること

第1章 なぜ「まず販路を増やす」が危険なのか

売上が伸び悩むと、ECモールへの出店やSNS、新規営業など「売る方法」に目が向きやすくなります。しかし、売上を増やすことが本当に今の会社に必要なのかは別問題です。特に中小企業では、販売、生産、人材、資金が密接につながっています。販路だけを見るのではなく、経営全体からボトルネックを探す必要があります。

1-1.販路開拓は「目的」ではなく「手段」

「売上を増やしたいので、新しいECモールへ出店したい」

こうした相談を受けた場合、すぐにECモールの比較を始めることはできません。

なぜなら、ECモールへの出店、自社ECの開設、SNS運用、展示会への出展、新規法人営業などは、すべて売上を作るための手段だからです。

その前に考えるべきなのは、

「なぜ売上を増やしたいのか」

「どの程度の売上増加が必要なのか」

「現在、売上拡大を妨げているものは何か」

という経営上の問いです。

手段から入ると、本来解決すべき課題とは違うところへ経営資源を使ってしまう可能性があります。

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1-2.相談の入り口と本当の経営課題は違うことがある

例えば、あるアパレル製造業が「販路を開拓したい」と考えていたとします。

話を聞くだけなら、

「ECを強化しよう」

「法人営業を増やそう」

という方向になりそうです。

ところが、さらに話を掘り下げると、現在の生産体制では受注量を大幅に増やすことが難しい状況だったとします。

つまり、問題は「売れないこと」ではなく、

「売れても作れないこと」

です。

さらに、生産能力を増やせない理由を確認すると、人材を採用できていないことが背景にあるかもしれません。

すると課題の構造は、

販路開拓

↓

生産能力

↓

採用難

となります。

最初に相談された「販路開拓」は、経営課題の一部分にすぎなかったわけです。

1-3.売上を増やすことが逆効果になる場合もある

生産能力に余裕がない企業が販促を強化し、受注だけを増やしたらどうなるでしょうか。

納期の長期化、残業の増加、品質低下、既存顧客への対応遅れなどが起こる可能性があります。

売上は増えたとしても、現場が疲弊し、利益率や顧客満足度が低下してしまえば、持続的な成長とはいえません。

そのため経営戦略では、

「売上を増やせるか」だけでなく「増えた売上を受け止められるか」

まで考える必要があります。

売る力と作る力のバランスを見ることが重要です。

第2章 販路の前に「経営のボトルネック」を見つける

経営課題を整理する際は、売上だけを見るのでは不十分です。販売を増やしたとき、生産、人材、資金、業務体制のどこに負荷がかかるのかを確認します。そして現在の成長を最も強く制限している部分を見つけます。そこを改善しないまま別の施策を実施しても、違う問題を大きくするだけになる可能性があります。

2-1.まず現在の売上構造を数字で確認する

架空のアパレル製造業を例に考えます。

年間売上が2,000万円で、

  • 法人向け製造受託 1,800万円
  • 自社ブランド販売 200万円

だったとします。

会社としては、将来的に2,500万円まで売上を伸ばしたいと考えています。

必要な増加額は500万円です。

ここだけを見ると、

「新しいECモールに出店して500万円増やそう」

「新規法人を増やそう」

という議論になります。

しかし、それだけでは不十分です。

現在の生産能力が年間2,100万円程度の受注で限界なのであれば、500万円の新規受注を獲得しても対応できません。

売上目標だけでなく、現在の供給能力も一緒に確認する必要があります。

2-2.会社の成長を止めているものを探す

次に考えたいのが、

「今、この会社の成長を最も制限しているものは何か」

です。

例えば、

「もっと注文があれば売上が増える」

のであれば、販路や集客が課題です。

一方、

「注文はあるが、人手不足で断っている」

のであれば、生産能力が課題です。

さらに、

「設備を増やせば生産できるが、投資資金がない」

のであれば、資金面が制約になっています。

同じ「売上を増やしたい」という会社でも、打つべき施策はまったく違います。

経営課題を考えるときには、表面的な現象ではなく、その原因を一段ずつ掘り下げることが重要です。

2-3.採用難は短期間では解決しない

今回の例では、生産能力不足の背景に採用難があるとします。

しかし採用は、ECサイトを開設するように「来月から始めればすぐ成果が出る」というものではありません。

求人条件、仕事内容、労働環境、採用媒体、自社の魅力、教育体制など、複数の要素が関係します。

場合によっては、採用だけではなく、省力化や業務改善、外注、設備投資なども検討する必要があります。

だからこそ、

短期的な課題と中長期的な課題を分ける

ことが重要です。

根本原因だからといって、すぐに解決できるとは限りません。

第3章 短期と中長期を分けて経営戦略を考える

ボトルネックが分かれば、すべてを一度に解決しようとする必要はありません。短期的には現在の経営資源で無理なく事業を続ける方法を考え、中長期的には成長を妨げている根本課題へ取り組みます。経営戦略では、目標だけでなく時間軸を分け、今やることと将来に向けて準備することを整理することが重要です。

3-1.短期的には「無理に売上を追わない」という選択もある

売上拡大という目標があっても、生産能力が限界なのであれば、短期的には無理に受注を増やさない判断も必要です。

これは消極的な経営ではありません。

むしろ、

  • 利益率の高い仕事を優先する
  • 自社の強みが発揮できる案件を選ぶ
  • 採算の低い仕事を見直す
  • 生産能力に合わせて受注量を調整する

といった取り組みによって、現在の経営資源から得られる成果を高める戦略です。

「売上最大化」ではなく、限られた生産能力をどこに使うかを考えます。

3-2.中長期では採用や生産体制に向き合う

一方、中長期的に売上規模を拡大したいのであれば、生産能力というボトルネックを解消する必要があります。

その根本が人手不足であれば、採用を経営課題として扱います。

単に求人広告を出すだけではなく、

「なぜ応募が来ないのか」

「入社する魅力を伝えられているか」

「採用後に育成できる体制があるか」

などを継続的に改善していく必要があります。

同時に、業務の標準化、省力化、設備投資、外部企業との連携など、採用以外の方法で生産能力を高められないかも検討します。

採用だけに解決策を限定しないことも経営戦略では重要です。

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3-3.経営戦略とは「何を先に解決するか」を決めること

企業には、常に複数の課題があります。

売上、人材、利益率、生産性、資金繰り、新商品開発、Web活用など、すべてを同時に改善することはできません。

だからこそ必要なのが優先順位です。

今回の例なら、

短期では、生産能力に合わせて受注と顧客を選ぶ。

中長期では、採用や生産体制を改善する。

そして生産能力を確保できる見通しが立った段階で、販路開拓を本格化する。

という順序が考えられます。

経営戦略とは、派手な成長施策を考えることではありません。

限られた人・時間・資金を、今どこへ投入するのかを決めることです。

まとめ|目の前の相談ではなく、本当の経営課題を見る

「販路を増やしたい」という相談でも、本当の課題が販路にあるとは限りません。生産能力を確認すると、その背景に人手不足や採用難が存在することもあります。その状態で無理に売上を増やせば、現場への負担を大きくする可能性があります。短期的には現在の生産能力に合わせて受注を整え、中長期では採用や生産体制という根本課題に向き合う。目の前の施策ではなく、その奥にある制約を見つけることが経営戦略の第一歩です。

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