「若いお客様を増やしたい」「売上を伸ばしたい」と考えたとき、「それならInstagramを始めよう」と手段から考えていないでしょうか。
Instagramは有効な集客手段の一つですが、すべての企業にとって最適とは限りません。
重要なのは、売上を分解し、誰に売りたいのか、顧客行動のどこに課題があるのかを確認したうえで、目的に合った施策を選ぶことです。
本記事では、Instagramを例に、マーケティング施策を経営成果につなげるための考え方を整理します。
本記事のポイント
- Instagramありきではなく、売上のどこに課題があるのかを先に考える
- 顧客の認知・比較・予約のどこで止まっているのかを見極める
- 施策の「目的の目的」を考え、売上までのつながりを明確にする
「とりあえずInstagram」が危険な理由
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Instagramは身近で、投稿数やフォロワー数など成果も目に見えやすい施策です。
そのため、集客や売上向上の話になると真っ先に候補へ挙がります。
しかし、経営課題を確認せず手段から入ると、本当に改善すべき場所とは違うところへ時間や予算を使うことがあります。
まずは「なぜInstagramなのか」を考えることが重要です。
「若者を集めたい」からInstagramへ飛んでいないか
「若いお客様を増やしたい」「もっと売上を伸ばしたい」。
こうした話になると、「それならInstagramをやりましょう」と反射的に話が進むことがあります。
Instagramは身近なSNSですし、写真や動画を使って情報を届けやすいため、特に若い世代への集客手段として候補に挙がりやすい媒体です。
もちろん、Instagramそのものが悪いわけではありません。
実際にInstagramが有効な企業や店舗も数多くあります。
問題は、目的を確認する前に手段が決まってしまうことです。
例えば「若者を集めたい」という話であれば、本来はその前に、「なぜ若者を集めたいのか」を考える必要があります。
平日の来店客が少ないのでしょうか。
既存顧客の高齢化によって将来の売上減少が見込まれているのでしょうか。
特定の商品を若い世代に販売したいのでしょうか。
それとも、新規顧客が減少しているため、新しい顧客層を開拓したいのでしょうか。
同じ「若者を集めたい」でも、背景にある経営課題によって取るべき施策は変わります。
場合によっては、若者を集めること自体が適切ではないこともあります。
既存顧客の再来店を増やした方が売上につながるかもしれませんし、客単価を改善した方が投資対効果は高いかもしれません。
Instagramはあくまで選択肢の一つです。
最初に考えるべきなのは、「Instagramをどう運用するか」ではなく、「何を改善すれば経営成果につながるのか」です。

健康番組とマーケティングに共通する「部分最適」
これは、テレビの健康番組をイメージすると分かりやすいかもしれません。
例えば、「血糖値が気になる人には、この食材がいい」と紹介されると、翌日スーパーでその商品が売れる、といった話があります。
「糖尿病が気になる。
それなら、この食材を食べよう」
非常に分かりやすい話です。
しかし、健康を考えるのであれば、一つの食材だけを食べればすべて解決するわけではありません。
食生活全体、運動、睡眠、飲酒、ストレス、体重管理など、さまざまな要素が関係しています。
一部分だけを取り出して「これをやれば大丈夫」と考えるのは、いわば部分最適です。
マーケティングにも同じことが起こります。
「若者を集めたい」
「若者はInstagramを使っている」
「だからInstagramをやればいい」
一見すると筋が通っています。
しかし、実際の課題が「商品そのものに魅力を感じてもらえていない」ことであれば、Instagramへの投稿を増やしても売上にはつながりません。
「Instagramを見て興味を持つ人はいるものの、価格が分からない」「検索すると古いホームページが出てくる」「予約方法が分からない」といった状態なら、改善すべき場所は別にあります。
健康番組の「これがいい!」と、マーケティングにおける「Instagramがいい!」は、意外とよく似ています。
必要なのは、一つの手段だけを見ることではありません。
事業全体を見て、どこに問題があるのかを判断することが重要です。

施策ではなく「経営課題」から考える
Webマーケティングでは、新しい手段が次々と登場します。
Instagram、TikTok、YouTube、LINE、Googleマップ、Web広告、SEOなど、選択肢はいくらでもあります。
最近では生成AIを使った情報発信も増えています。
手段が増えること自体は悪いことではありません。
しかし、選択肢が増えるほど注意したいのが、「何を使うか」から考え始めてしまうことです。
例えば売上が伸び悩んでいる場合でも、その原因は一つではありません。
そもそも会社や店舗を知られていないのかもしれません。
知ってはいるものの、競合と比較したときに選ばれていないのかもしれません。
商品には興味を持たれているものの、問い合わせ方法や予約方法が分かりにくい可能性もあります。
また、新規顧客は十分に獲得できているものの、一度購入した顧客がその後戻ってきていないことも考えられます。
それぞれ改善すべき場所は違います。
認知不足なら情報発信が必要かもしれません。
比較で負けているなら、自社の強みや選ばれる理由を明確にする必要があります。
再来店が少ないのであれば、SNSより既存顧客との関係づくりを優先した方がよい場合もあります。
経営改善では、「できそうなこと」ではなく「解決すべきこと」から考えることが重要です。
売上と顧客行動を分解すると打ち手が見えてくる
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「売上を増やす」「集客を強化する」という言葉だけでは、何を改善すればよいのかは分かりません。
そこで有効なのが、売上と顧客の行動を分解して考えることです。
売上を構成する要素と、顧客が自社を知ってから購入するまでの流れを整理すると、優先して改善すべき場所が見えやすくなります。
まず「売上」を分解してみる
「売上を増やしたい」という目標も、そのままでは漠然としています。
例えば店舗型のビジネスであれば、売上は大まかに、
売上=顧客数×客単価
と考えることができます。
さらに顧客数を、新規顧客と既存顧客に分けることもできます。
既存顧客について考えれば、
既存顧客の売上=顧客数×購入頻度×客単価
といった形でも分解できます。
すると、同じ「売上を増やしたい」でも、打ち手が変わってきます。
新規顧客が少ないなら、認知を広げる施策が必要かもしれません。
来店客数は十分なのに客単価が低ければ、セット商品や上位商品の提案、価格設定の見直しなどを考えた方がよいかもしれません。
新規顧客は獲得できているものの再来店が少ないのであれば、リピートにつながる仕組みを整える必要があります。
ここで重要なのは、Instagramが有効なのは売上を構成する要素の一部分にすぎないということです。
Instagramによって認知が増えても、客単価の低さやリピート率の低さが問題なのであれば、経営全体への効果は限定的です。
売上を分解することで、「Instagramをやるべきか」ではなく、「売上を構成するどの数字を改善するためにInstagramを使うのか」と考えられるようになります。

「誰に売りたいのか」を明確にする
次に考えたいのが顧客です。
「若者を集めたい」という言葉にも注意が必要です。
10代の高校生と20代の会社員、30代の子育て世代では、抱えている悩みも、お金の使い方も、情報収集の方法も違います。
大切なのは、細かな人物像を作り込むこと自体ではありません。
「自社の商品やサービスは、誰の、どのような課題を解決するものなのか」を明確にすることです。
例えば同じ飲食店でも、「休日に友人と楽しく過ごしたい人」と「仕事中に短時間で昼食を済ませたい人」では、来店理由が違います。
前者であれば店内の雰囲気や料理の写真が重要かもしれません。
一方、後者であれば営業時間、駐車場、提供時間、価格、混雑状況などの情報の方が重要になるでしょう。
顧客が違えば、伝えるべき情報も変わります。
そして、情報収集に使う媒体も変わります。
Instagramを見て店を探す人もいれば、Google検索やGoogleマップを使う人もいます。
知人からの紹介を重視する人もいます。
だからこそ、「若者だからInstagram」と媒体から考えるのではなく、顧客が何を求め、どのように商品や店舗を選ぶのかから考える必要があります。

認知・比較・予約のどこで止まっているのか
顧客は、Instagramの投稿を見た瞬間に購入するわけではありません。
実際には、
知る→興味を持つ→調べる→比較する→相談・予約する→購入する
といった複数の段階を経て行動します。
ここで重要なのが、「自社はどこで顧客を取りこぼしているのか」を考えることです。
そもそも知られていないのであれば、InstagramやWeb広告などによって認知を増やす施策が考えられます。
一方、Instagramは見られているのに来店につながらないのであれば、問題は認知ではないかもしれません。
例えば、投稿を見て興味を持った人が店名を検索したとします。
Googleマップに必要な情報が掲載されていない。
ホームページを見ても他店との違いが分からない。
料金やメニューが分からない。
口コミを確認すると不安が残る。
電話予約しかできず、営業時間外には予約できない。
こうした問題があれば、Instagramで認知を増やしても、比較や予約の段階で顧客が離れていきます。
これは、お店の入口へ人を集めながら、入口の先に進みにくい状態をつくっているようなものです。
集客とは、入口だけを広げることではありません。
認知から購入までの流れ全体を確認し、最も詰まっている場所を改善することが重要です。


「目的の目的」を考えるとSNSの役割が変わる
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施策を経営成果につなげるには、「なぜそれをやるのか」を一段ずつ深掘りすることが重要です。
Instagramを実施すること自体は目的ではなく、その先に顧客との関係づくりや信頼形成、相談や来店があります。
さらにその先に売上があります。
このつながりを整理すると、追うべき数字や必要な施策も変わってきます。
Instagramの先に何があるのか
Instagramを運用する場合も、「Instagramをやる」というところで思考を止めないことが大切です。
例えば、次のように目的を一段ずつ考えてみます。
①Instagramを実施する
②顧客との関係性をつくる
③信頼を積み重ねる
④相談・来店・紹介につなげる
⑤売上を向上させる
Instagramは売上につながる可能性があります。
しかし、①から⑤へ直接ジャンプするわけではありません。
投稿によって会社や店舗の存在を知ってもらう。
商品やサービスへの理解を深めてもらう。
何度も情報に触れてもらうことで、会社やスタッフに対する安心感を持ってもらう。
その結果として、「一度相談してみよう」「今度行ってみよう」「知人に紹介してみよう」といった行動につながります。
そして、その先に売上があります。
このように、「それは何のためにやるのか」と一段上の目的を考えていくことを、ここでは「目的の目的を考える」と呼びます。
「Instagramをやるのは何のためか」
「顧客との関係をつくるため」
「関係をつくるのは何のためか」
「信頼してもらうため」
「信頼してもらうのは何のためか」
こうして問いを繰り返すことで、施策と経営成果の間にある道筋が見えてきます。
フォロワー数や投稿数が目的になる理由
目的の目的を考えないままSNS運用を始めると、手段そのものが目的になりやすくなります。
「週3回投稿する」
「フォロワー1,000人を目指す」
「毎日ストーリーズを更新する」
こうした目標は、活動を管理するうえでは役立ちます。
しかし、投稿回数が増えれば売上が増えるとは限りません。
フォロワーが増えても、自社の商品を購入する可能性が低い人ばかりであれば、経営成果への影響は限定的です。
問題なのは、Instagramから売上までの途中を飛ばしてしまうことです。
「Instagramを頑張る」
↓
「売上を増やす」
この二つだけを結び付けていると、その途中で何を確認すればよいのか分かりません。
結果として、確認しやすい投稿回数、フォロワー数、「いいね」の数などが目的になっていきます。
もちろん、こうした数字を見る必要がないという意味ではありません。
大切なのは、その数字が売上へ向かう途中のどの位置にあるのかを理解することです。
例えばInstagramを「見込み客との接点をつくり、相談につなげる媒体」と位置付けるのであれば、フォロワー数だけではなく、プロフィールへのアクセス数、ホームページへの遷移、問い合わせ、予約、来店なども確認する必要があります。
見るべき数字は目的から逆算して決まります。
KPIを決める前に、「この数字が増えると、その次に何が起きるのか」を考えることが重要です。

「何をやるか」より「なぜ売上につながるのか」
マーケティング施策を考えるときに、最も重要なのは流行している手段を知ることではありません。
Instagramをやるべき会社もあれば、Googleマップを整備した方がよい会社もあります。
ホームページを改善した方がよい場合もあれば、既存顧客への案内を強化するだけで売上が伸びる場合もあります。
場合によっては、マーケティング施策を増やす前に、商品や価格、接客、営業方法そのものを見直した方が効果的なこともあります。
判断基準の一つは、「その施策が、どのような経路で売上につながるのかを説明できるか」です。
例えば、
「若者に来てほしいからInstagram」
ではなく、
「20代から30代の新規顧客を増やしたい」
「現在はその層からの認知が不足している」
「対象となる顧客が情報収集にInstagramを利用している」
「Instagramで存在を知ってもらい、興味を持ってもらう」
「プロフィールからホームページへ移動してもらう」
「ホームページで商品や料金、他社との違いを確認してもらう」
「予約につなげる」
というところまで整理します。
ここまで考えられれば、Instagramは単なる流行の施策ではありません。
売上まで続く顧客行動の中で、「認知と興味をつくる」という明確な役割を持った手段になります。
そして、Instagram以外に問題があれば、そちらを先に改善すべきだと判断することもできます。
限られた人材、時間、予算で成果を出すためには、何でも取り組むことはできません。
だからこそ、「何をやるか」より先に、「どこを改善するのか」「なぜそれが売上につながるのか」を考えることが重要です。
流行の施策を選ぶ前に、売上までの道筋を分解して考える
「若者を集めたいからInstagram」という考え方そのものが間違いなのではありません。
問題は、経営課題や顧客行動を確認せずに手段を決めてしまうことです。
売上を分解し、対象となる顧客を整理し、認知・比較・予約のどこに課題があるのかを確認する。
そのうえで「この施策は何のために行い、その先で何を起こしたいのか」と目的をたどることで、必要な施策が見えてきます。
流行の手段に飛びつくのではなく、売上につながる道筋から逆算して考えることが大切です。



