原価を見直し、価格転嫁を進め、資金繰りにも少し余裕が出てきた。
それでも、そこで改善活動を終えてしまえば、外部環境が変わったときに再び利益を失う可能性があります。
粗利益率の改善はゴールではありません。
重要なのは、改善によって生まれた利益・時間・人材といった経営資源を、次の成長につながる活動へ振り向けることです。
地方企業がさらに一段上へ進むための考え方を整理します。
本記事のポイント
- 粗利益改善後は経営資源の再配分
- 生産性向上で生まれた時間の使い道を決める
- 自社の強みと市場機会を結び付ける
粗利益率の改善はゴールではなく、成長のスタート地点
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粗利益率が改善し、資金繰りにも余裕が出てくれば、会社はようやく次の一手を考えられる状態になります。
しかし、利益を守ることだけに集中していては成長にはつながりません。
必要なのは、改善によって生まれた利益・時間・人材を、どこへ再配分するかを決めることです。
利益が出た後に問われるのは「何に使うか」
粗利益率を改善するために、材料費を見直したり、作業時間を短縮したり、価格転嫁を進めたりする企業は少なくありません。
その結果、年間500万円の利益改善ができたとします。
ここで重要なのは、500万円増えたことそのものではありません。
その500万円を何に使うのかです。
単に預金として残しておくのか、設備投資するのか、人材育成に使うのか、新規顧客開拓に投じるのか。
利益改善によって生まれた余力を次の利益を生み出す活動へ振り向けることで、初めて経営改善が成長につながります。
守りの経営から攻めの経営へ移るとは、経営資源の使い道を変えることでもあります。

生産性を上げても、使い道がなければ利益は増えない
近年、人手不足への対応として省力化やDX、AI活用などが注目されています。
例えば、これまで1時間かかっていた作業を30分に短縮できれば、生産性は大きく向上します。
しかし、ここで一つ考えなければならないことがあります。
空いた30分を何に使うのでしょうか。
低採算の仕事をもう一件増やすのであれば、会社全体の利益率が改善しない可能性があります。
一方で、その時間を新規営業、技術開発、顧客分析、原価管理、人材育成などに使えば、将来の利益を生み出す活動になります。
生産性向上は目的ではありません。
経営資源を、より付加価値の高い仕事へ移すための手段です。
まず「増やす仕事」と「減らす仕事」を決める
地方の中小企業では、人員にも資金にも限りがあります。
だからこそ、すべての仕事を増やすことはできません。
必要なのは、自社の仕事を、
• 今後増やしたい仕事
• 現状維持する仕事
• 減らしていきたい仕事
に分けることです。
売上が大きいから残す、昔からの取引だから続ける、という判断だけでは不十分です。
粗利益率、必要な工数、将来性、自社の強みとの相性などを見ながら、限られた経営資源をどこへ集中させるかを決めます。
成長戦略の第一歩は、何を始めるかだけでなく、何をやめるかを決めることでもあります。

地方企業の成長戦略は「強み×機会」から考える
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限られた経営資源を有効に使うには、自社が得意なことだけを見るのでは不十分です。
一方で、市場の成長分野を追いかけるだけでも成功は難しいでしょう。
重要なのは、自社が持つ強みと、地域や市場で起きている変化が重なる場所を探すことです。
「品質が高い」「技術力がある」では強みにならない
自社の強みを尋ねると、
品質が高い。
技術力がある。
お客様の要望に柔軟に対応できる。
といった答えが返ってくることがあります。
しかし、それだけでは競合企業との違いが分かりません。
例えば金属加工業であれば、
難削材の加工が得意なのか。
小ロットの試作品に強いのか。
短納期対応なのか。
設計段階から相談できるのか。
特定業界で求められる品質管理に対応できるのか。
といったところまで具体化する必要があります。
強みとは、自社が得意だと思っていることではありません。
顧客が他社ではなく自社を選ぶ理由です。

強みだけでなく「市場の変化」を見る
どれだけ高い技術を持っていても、その技術を必要とする市場が縮小していれば、成長には限界があります。
そこで必要になるのが、市場の機会を見ることです。
例えば上越妙高地域であれば、半導体関連の産業動向やリゾート開発など、地域経済に影響を与える変化があります。
重要なのは、
半導体関連産業が伸びているから参入する。
リゾート開発が進んでいるから観光分野へ進出する。
という単純な発想ではありません。
まず市場で何が求められているかを調べ、その中に自社の設備、技術、人材、取引実績を生かせる領域があるかを考えます。
市場機会と自社の強みが重なる領域こそ、限られた経営資源を投じる候補になります。

「できる仕事」から「選ばれる仕事」へ変える
地方の製造業では、
この加工ならできます。
この設備があります。
このサイズまで対応できます。
という情報発信が多く見られます。
もちろん必要な情報ですが、それだけでは発注側から見れば他社との違いが分かりません。
必要なのは、
どのような課題を持つ企業に対して、
どのような強みを使い、
どのような価値を提供できるのか。
まで整理することです。
例えば「金属加工ができます」ではなく、
「試作段階で仕様変更が多い企業に対し、小ロット・短納期で加工から改善提案まで対応できる」
となれば、顧客から見た価値が具体的になります。
成長するためには、できることを増やすだけでなく、選ばれる理由を明確にする必要があります。

成長戦略を「投資・営業・発信」に落とし込む
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強みと市場機会を見つけても、それだけでは売上は増えません。
必要なのは、戦略を具体的な行動に変えることです。
設備、人材、営業、Web発信、DXなどへの投資は、目的ではなく成長戦略を実現するための手段です。
何を強化するための投資なのかを明確にする必要があります。
設備投資は「補助金が使えるから」で決めない
設備投資を検討するとき、
補助金が使えるから。
新しい設備だから。
他社も導入しているから。
という理由から始めるのは危険です。
本来は、
どの市場を狙うのか。
どの仕事を増やしたいのか。
現在何がボトルネックになっているのか。
設備導入によって、売上や粗利益がどれだけ増えるのか。
を先に考える必要があります。
そのうえで、省力化や生産能力向上に必要な設備を選び、利用できる補助制度があれば活用します。
順番は、
経営課題 → 成長戦略 → 投資判断 → 補助金
です。
補助金は戦略ではなく、戦略を実行するための資金調達手段の一つです。

Web発信と営業で「強み」を市場に届ける
自社に優れた技術があっても、それを必要としている企業に知られていなければ受注にはつながりません。
地方企業ほど、
昔からの取引先。
紹介。
既存顧客からの口コミ。
に営業を依存しているケースがあります。
しかし、新しい市場へ進むのであれば、自社から情報を届ける必要があります。
Webサイトで技術や事例を発信する。
展示会へ出展する。
既存顧客から別部門を紹介してもらう。
ターゲット企業へ直接提案する。
重要なのは、会社案内をすることではありません。
自社がどのような課題を解決できる企業なのかを発信することです。
DXやAIは「会社の強みを伸ばすため」に使う
DXやAI導入も同じです。
業務効率化そのものを目的にすると、ツールを導入したところで終わってしまうことがあります。
例えば見積作成をAIで効率化したのであれば、空いた時間を新規営業や原価分析に使う。
生産管理をデジタル化したのであれば、蓄積したデータを使って採算の良い仕事を分析する。
Webマーケティングを強化したのであれば、自社の強みと相性の良い顧客からの問い合わせを増やす。
DXやAIは、会社の進む方向を決めるものではありません。
経営戦略を実行するスピードを上げるための道具です。

粗利益改善の次は、経営資源を「未来の利益」へ振り向ける
粗利益率を改善し、資金繰りを安定させることは重要です。
しかし、それだけでは外部環境が変化したとき、再び利益が減少する可能性があります。
次に考えるべきなのは、改善によって生まれた利益・時間・人材をどこへ振り向けるかです。
自社の強みを具体化し、市場の変化から機会を探し、その重なる領域へ経営資源を集中させる。
設備投資、Web発信、DX、AI、補助金活用は、その戦略を実現するための手段です。
守りによって生まれた余力を、未来の粗利益をつくる活動へ変えていきましょう。

