老舗を動かす“第2創業”──4代目が仕掛けた、5代目と若手による新規事業プロジェクト

経営戦略 上越妙高 Management

とある創業100年の老舗企業。

4代目社長は時代の変化に対応するため、新規事業の立ち上げを決意しました。

しかし、長年の成功体験を持つ古参社員たちは変化に消極的

そんな中、5代目候補と若手社員が中心となり、部門横断のプロジェクトチームが誕生しました。

老舗企業が「変革」をどう起こしたのか──その挑戦の軌跡をたどります。

  • 組織の“慣性”が変革を阻む壁になる
  • 若手主導のプロジェクトが文化を変える
  • 「第2創業」は社内意識改革から始まる

変革を阻む「成功体験」と「慣性の力」

せのお
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長い歴史を誇る企業ほど、変化を拒む“見えない壁”が存在します。ここでは、古参社員の成功体験がどのように組織を縛り、4代目社長がいかにしてその壁を乗り越えようとしたのかを見ていきます。

(1)100年企業に潜む“無意識の保守性”

創業100年を迎える企業には、長い歴史の中で築かれた信頼・ブランド・顧客基盤があります。

これは企業にとって大きな財産である一方で、「変えないことが安定である」という無意識の保守性を生み出します。

現場では「昔からこのやり方でやってきた」「変える必要がない」という声が聞かれ、結果として新しい挑戦が芽を出す前に摘まれてしまうことがあります。

特に、長年勤めてきた古参社員ほど、その成功体験が誇りとなり、同時に変化へのブレーキになりがちです。

彼らにとっては、新規事業は“自分たちの時代を否定するもの”に見えることもあります。

そのため、社長が新規事業の必要性を訴えても、心の底では「どうせ失敗する」「今のままで十分」という冷ややかな反応を示すことも少なくありません

(2)4代目社長の焦りと孤独

市場環境は大きく変わり、従来の強みだけでは成長が見込めない。

そう感じるのが4代目社長です。

老舗企業の経営者ほど「先代が築いたものを守る責任」と「時代に合わせて変える使命」の狭間で葛藤します。

古参社員の理解を得ようと丁寧に説明を重ねても、表向きは賛同しながらも実際には動かない――そんな状況に社長は次第に疲弊していきます。

変革を訴えるほど、組織内の温度差が浮き彫りになり、「自分だけが焦っているのではないか」という孤独に襲われるのです。

(3)「次の100年」を見据えた決断

そんな中、社長は「現体制の中では新しい風は起こせない」と判断します。

既存組織とは別軸で、新規事業を推進するプロジェクトチームを立ち上げることを決意します。

メンバーには、次期社長候補である5代目と、若手社員を中心に選抜。

古参社員が中心の本流とは異なる“小さな独立国”のようなチームをつくることで、スピード感と柔軟性を担保しようとしたのです。

これは単なる事業開発ではなく、企業文化そのものを変える挑戦でした。

長年の慣性に立ち向かう覚悟が、4代目の決断を後押ししました。

5代目と若手によるプロジェクトの始動

せのお
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新たな挑戦は、次世代を中心とした小さな一歩から始まりました。ここでは、若手主体の部門横断チームがどのようにして組織の枠を超え、新規事業を推進していったのかを解説します。

(1)部門横断の「特命チーム」誕生

プロジェクトチームは、営業・製造・企画・管理といった部門の垣根を越えてメンバーを選出しました。

部門横断型の組織とすることで、会社全体の視点を持ちながらも、既存の組織構造に縛られずに行動できるようにしました。

「今までの常識を疑おう」「ゼロベースで考えよう」という掛け声のもと、チームは週1回の定例会を中心に、自主完結型で活動を始めます。

上司の承認を待たず、自ら意思決定し、行動に移すスピード感が特徴です。

これにより、従来の“会議ばかりで進まない文化”から脱却し、具体的なアクションが次々と形になっていきました。

(2)メリット:スピードとシナジーの創出

この体制の最大の強みは、意思決定の速さと柔軟性です。

既存組織から乖離しているため、調整コストが少なく、アイデアをすぐに試せる環境があります。

また、異なる部門から集まったメンバー同士の議論は、多様な視点と知恵を生み出します。

たとえば、製造部の現場目線と、営業部の顧客目線が融合することで、これまでにない新しい商品コンセプトが生まれました。

さらに、若手社員が主体となって意思決定を進めることで、社内全体にも刺激が広がり、停滞していた組織に「挑戦していい空気」が生まれていきます。

これは副次的ではありますが、企業文化にとって非常に大きな成果といえます。

(3)デメリット:曖昧な責任と孤立感

一方で、プロジェクトチームには課題もあります。

まず、責任や評価の線引きが曖昧になりやすいことです。

既存の人事制度が想定していないため、成功しても失敗しても誰がどう評価されるのか不透明になりがちです。

また、既存部門との関係が薄れることで、チームが“浮いた存在”になる危険もあります。

とくに古参社員からは「若い者が勝手にやっている」「俺たちの出番はない」と距離を置かれるケースも見られます。結

果として、プロジェクトメンバーが社内で孤立し、精神的な負担を感じることも少なくありません。

このように、スピードと自由の裏には、組織的なリスクが潜んでいるのです。

“変革の火種”が社内に広がるとき

せのお
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若手が中心の挑戦は、単なる事業開発にとどまりません。新しい風が組織全体に波及し、世代を超えた共創へと発展していく過程を見ていきましょう。

(1)若手の成長がもたらす新しいリーダー像

プロジェクトを通じて最も大きな変化が起こったのは、実は若手社員自身でした。

自ら意思決定を行い、経営的な視点で事業を動かす経験は、彼らの自信を大きく育てました。

「自分たちにも会社を変えられる」「挑戦してもいいんだ」という実感が芽生えると、彼らは社内外の関係者との対話を積極的に行うようになります。

この成長こそ、次の世代のリーダー育成の第一歩となりました。

5代目にとっても、同世代の仲間と共に汗を流すことが、将来の経営に向けた貴重な実践の場となったのです。

(2)古参社員との“新しい関係性”

初めはプロジェクトに懐疑的だった古参社員たちも、若手の熱意と成果を目の当たりにするうちに、次第に態度を軟化させていきます。

「自分たちの経験を次の世代に活かせるのではないか」と考えるベテランも現れ、若手との意見交換や協働が生まれるようになりました。

ここで重要なのは、変革とは“誰かを排除すること”ではなく、“次の世代と共に進化すること”だという気づきです。

プロジェクトの存在が、世代間の断絶を乗り越えるための対話のきっかけになったのです。

(3)変革を続ける「文化」を育てる

新規事業の成果そのものよりも、重要なのは“変革を続けられる文化”を社内に根づかせることです。

プロジェクトで得られたノウハウや失敗の記録を共有し、次の挑戦に活かすことで、組織全体が「試行錯誤を許容する体質」へと変わっていきます。

4代目社長が感じていた孤独も、今では“仲間とともに進む手応え”へと変わりました。

100年の歴史を持つ企業が、次の100年を見据えて動き出した瞬間です。

このように、新規事業プロジェクトは単なる経営戦略ではなく、“組織文化の再設計”の一歩となるのです。

変革は「若手を信じる覚悟」から始まる

企業を変えるのは、仕組みや戦略だけではありません。

現場に新しい視点を持ち込み、若手に意思決定を任せる勇気こそが、老舗企業にとっての“第2創業”の第一歩です。

4代目がその決断を下し、5代目と若手が実践したことで、組織は少しずつ進化を始めました。

変革とは特別な出来事ではなく、日々の小さな挑戦の積み重ねなのです。

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