「SNSがあればホームページなんていらない」という言葉を耳にすることが増えました。しかし、それは果たして本当でしょうか?
特に創業数十年以上を誇るような老舗企業にとっては、自社の強みや歴史をどのようにWeb上で伝えるかが、現代の経営において重要なテーマです。
本稿では、「SNSとHP、どちらが本当に必要なのか?」という問いから出発し、SNS万能論を冷静に見直しながら、特に老舗企業が取るべきWeb戦略を一気通貫で解説します。
本記事のポイント
- SNSとHPは役割が違う、両立が基本
- 自社の強みを言語化し、Webで可視化
- 顧客視点で届け方を設計するのが重要
そもそも「SNSがあればHP不要?」は正しいのか?
-150x150.jpg)
「SNSがあればHPは不要」と考える企業も増えていますが、それは本当でしょうか?本章ではSNSとHPの違いや役割を整理し、自社にとって何が必要なのかを見極める視点をお伝えいたします。
(1)Webマーケティングは「SEO」と「SNS」に大別される
Webマーケティングと一口に言っても、その中身は多岐にわたります。
中でも代表的なのが、SEO(検索エンジン最適化)とSNS(ソーシャルネットワークサービス)の2本柱です。
SEOとは、Googleなどの検索エンジンで上位表示されることを狙い、自社サイトに見込み客を呼び込む施策です。
一方SNSは、InstagramやTikTokなどで共感を得て情報を拡散し、関心を喚起する手法です。
この2つは、よく混同されがちですが、そもそもアプローチする層もタイミングも異なります。
検索してくる人は「今すぐ何かを解決したい」人、SNSを見る人は「なんとなく流し見をしている」人が多い。
つまり、マーケティングのフェーズが違うのです。
(2)SNSとHPは目的も役割も違うメディア
「SNSさえあればホームページなんて不要でしょ?」と上越妙高の商工会議所の集まりでもよく聞きます。
しかし、これは役割の違いを理解していないがゆえの誤解です。
SNSは“話題の入り口”であり、拡散力が強みです。
しかし、それはあくまで「認知獲得」の段階。
最終的に信頼され、問い合わせや成約につながるには、情報の信頼性や網羅性を担保したホームページの存在が不可欠です。
SNSが火付け役になったとしても、「この会社って実際どんなサービスしてるんだろう?」と興味を持った人が訪れるのがHPです。
情報が散在したSNSだけでは、必要な判断材料が揃わず、信用されにくいのです。
(3)「バズれば売れる」は幻想?Webマーケ会社のポジショントークに注意
Webマーケティングの業界では、「SNSをやれば売上が上がりますよ」「バズらせましょう」という言葉が飛び交います。
しかし、これはWebマーケ会社側のポジショントークである場合も少なくありません。
確かにSNSの運用代行はビジネスになりますが、SNSが自社の課題を解決する最適解かどうかは別問題です。
例えば、BtoB業のように顧客の検討期間が長い業種では、SNSのバズよりも、専門性と信頼感のあるHPの充実が重要になる事が多いです。
SNSで興味を持った見込み客を、HPへ誘導して信頼構築する“導線設計”こそが大切なのです。
老舗企業こそ、自社の「コアスキル」を見直すべき理由
-150x150.jpg)
老舗企業がWeb活用を考える際、まず見直すべきは「自社の強み」です。長年培った技術や信頼こそが、現代のマーケティング資源。本章ではその活かし方を整理します。
(1)創業〇〇年の“技術や信頼”は最強のマーケティング資産
たとえば創業100年を超える企業には、長い年月をかけて培ってきた技術力・顧客との信頼関係・地域とのつながりといった、他社にはない無形資産があります。
これらは単なる歴史的背景ではなく、現代においても通用する「マーケティング資源」です。
特に「〇代目」のような代替わりのタイミングでは、伝統にとらわれることなく、その技術や信頼をどう現代に伝えるかを考える好機です。
SNSやHPは、そうした“無形の強み”を社会に可視化する手段でもあるのです。
(2)内部資源(強み)×Webの掛け算で独自価値を伝える
たとえば、オフィス機器レンタル業として、ただの機器提供ではなく「補助金活用の支援」や「DX導入のコンサル」などまで踏み込んでいるのであれば、それは明確な差別化ポイントです。
ところが、それがWeb上に正しく表現されていなければ、外部から見れば“ただの機器屋さん”に見えてしまうかもしれません。
Webマーケティングは、ただ目立つためのツールではありません。
自社の強みを発掘し、それを社会に伝わる形に翻訳するツールです。
SNSやHPは“自社の中にある資産を最大化する装置”と捉えるべきです。
(3)Webマーケティング以前に、経営戦略と強みの言語化が必須
いくらSEOやSNSに力を入れても、「何を、誰に、なぜ届けたいのか」が曖昧なままでは、すべてが空回りします。
まずやるべきは、経営戦略の中で自社の強みを明文化すること。
たとえばSWOT分析を活用して、自社の内部資源を棚卸しし、市場や競合との関係性を客観的に把握することが、Web施策の土台になります。
特に老舗企業は「これまで当たり前にやってきたこと」が、外から見ると非常に価値があることも多い。
それを“当たり前”と捉えず、価値として言語化し直す視点がWeb活用において鍵となります。
↓↓↓顧客にとっての当社の強みは?↓↓↓
Web戦略の立て方と、SNS・HPの正しい使い分け
-150x150.jpg)
SNSやHPを活用するには「どれをやるか」ではなく、「なぜやるか」が重要です。本章では、顧客視点に立った情報設計と、SNS・HPの役割分担、そして持続可能なWeb戦略の考え方を解説します。
(1)まずは顧客視点で「どんな情報が、どこで必要か」を考える
Web戦略を立てるうえで大切なのは、“自社が伝えたいこと”ではなく、“相手が必要としている情報”を届けることです。
例えば、Z世代のような若年層であればInstagramやTikTokなどのSNSでの訴求が有効ですが、BtoBの経営者層には、検索ベースでのHPやYouTubeでの解説動画の方が信頼性を担保できます。
顧客が「どんな課題を」「どこで調べて」「どんな情報で意思決定するか」を描くことで、SNSなのかSEOなのか、どちらに力を入れるべきかが見えてきます。
(2)SNS=Instagram・TikTok、HP=SEO・YouTubeと整理する
実務的に考えると、Web施策は以下のように分けて捉えると整理しやすくなります。
①SNS型施策:Instagram、TikTok、X(旧Twitter)
→「認知拡大」「共感の獲得」「若年層へのアプローチ」
②SEO型施策:コーポレートサイト、YouTube、Googleマップ
→「信頼性の確保」「検討層への情報提供」「問い合わせの導線設計」
こう整理すれば、自社の商材・ターゲットに合った施策が自然と見えてきます。
重要なのは、「なんとなくSNSを始める」のではなく、目的から逆算してツールを選ぶことです。
(3)小さく試して学び、継続的に育てる“Web経営”の視点を持つ
Webマーケティングに正解はありません。
大切なのは、小さく始めて、反応を見て、改善していくことです。
例えばInstagramで1日1投稿を1ヶ月続けてみる。
HPの記事を週に1本書いてみる。
そういった「小さな積み重ね」が、長期的には自社の資産になります。
また、SNSやHPの運用を社内で内製化していくことも視野に入れ、ノウハウを蓄積し“育てる”という視点も重要です。
老舗企業にとってWeb活用とは、単なるツール導入ではなく、経営の新たな柱づくりでもあります。
SNS万能論に惑わされず、自社の戦略を軸に考える
SNSの拡散力は魅力的ですが、それが即ビジネス成果に結びつくとは限りません。
特に老舗企業であれば、まずは自社の歴史・信頼・技術といった「コアスキル」に立ち返るべきです。
その上で、誰に何を届けるのかを見極め、SNSとHPを目的に応じて使い分ける戦略が求められます。
Webマーケティングは目的ではなく手段。
焦らず、自社に最適なWebの育て方を見つけていきましょう。