美容院の経営は「技術力」だけでは維持が難しくなっています。
人口減少と来店頻度の減少に直面する今こそ、サービスマーケティングの視点が必要です。
本記事では、7Pフレームを軸に、顧客体験の設計と理解を通じて、客単価とLTVを高めるヒントをお届けします。
本記事のポイント
- サービスは体験価値で評価される
- 顧客心理を理解することで提案力UP
- 技術+設計が客単価とLTVを上げる
サービスマーケティングが美容院経営を変える
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技術力に自信がある美容院でも、顧客に選ばれ続けるには「体験の設計」が不可欠です。無形商材であるサービスの品質は、7Pを活用することで可視化・再現可能になります。
(1)サービスは“体感”で評価されるからこそ、設計が必要
美容院のサービスは目に見えない「無形商材」です。
完成品が事前に見えるわけでもなく、お客様が受ける体験は毎回違います。
たとえば同じカットであっても、担当者・会話の内容・空間・気分などによって「良かった/イマイチだった」と判断されます。
これはつまり、サービスの満足度がお客様の主観的な“体感”によって決まるということです。
ここで重要なのが、「体感」を“設計できる”という視点。
行き当たりばったりの接客ではなく、満足の仕組みを“見える化”し、再現性を持たせることが今後の競争力になります。
(2)美容院に活かす7P:7つの要素で体験を設計する
サービスマーケティングのフレームワークとして知られる「7P」は、以下の7つの視点でサービスを構成・改善する手法です。
①Product(製品・サービス)
似合わせカット、再現性の高いカラーなど、技術そのものだけでなく、その人に合った提案があるかどうか。
②Price(価格)
単なる料金表ではなく、納得感・安心感のある価格帯か?パッケージ化や指名料も含めて設計可能。
③Place(立地・アクセス)
物理的な場所だけでなく、予約のしやすさ、Googleでの情報、LINE予約なども含めて考える。
④Promotion(販促)
SNS・クーポン・紹介制度など、どう知ってもらい、どう来店につなげるかの戦略。
⑤People(人)
スタッフの接客姿勢・印象・会話の内容。技術力と並んで重要な評価要素。
⑥Process(提供の流れ)
来店から退店まで、快適に・スムーズに進むか。予約確認、カウンセリング、待ち時間などの細部にこそ差が出る。
⑦Physical Evidence(物的証拠)
内装、制服、香り、音楽など、無意識に安心感や清潔感を与える要素。
これらの7つの要素を意識して設計することで、技術力だけでなく、「来たくなる・通いたくなる美容室体験」を提供できます。
(3)「技術だけでは差別化できない時代」の到来
確かにカットをはじめ施術の技術力という強みは重要です。
しかし今、人口減少の中で常連の来店頻度が減っており、これまで通りの運営では売上維持が難しくなってきています。
競合の閉店や新生活スタートの4月のような新規流入のチャンスがあっても、選ばれるかどうかは「体験価値」次第です。
「なんとなく通っているお客様」を「ここがいいから通いたい顧客」に変えるには、サービスの“再設計”が必要です。
体験価値とは、顧客の内側にある感情のこと
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顧客は皆、同じ体験を求めているわけではありません。本人の性格や状況によって、求める価値は異なります。自分自身や家族の実例から、体験価値の幅を探ります。
(1)私は髪型にこだわりがないが、時間にはこだわりがある
私は自分の髪型に大きなこだわりはありません。
正直、「いつも通りでお願いします」と言えれば十分です。
それよりも、仕事の合間に訪れるこの時間をリラックスできる空間にしたいと考えています。
雑談も好きですが、あまり話しかけられすぎるのは疲れてしまいます。
技術だけではなく「ちょうどよい距離感」が、私にとっては重要な体験価値なのです。
このように、技術よりも“空気感”や“過ごし方”に価値を感じる人は少なくありません。
(2)妻は「仕上がり」と「納得感」を求めている
一方、妻はしっかりと自分の理想の髪型があります。
SNSで見つけたイメージを共有して、「こうなりたい」を形にしてほしいと願っています。
その際に重要なのは、「やりたいこと」を言語化する手伝いをしてくれるカウンセリングや、施術中の細かな配慮です。
つまり、「自分の思いをきちんと汲んでもらえた」と感じられるかどうかが満足度に直結します。
(3)サービス後に気になるのは、他人の評価
仕上がった髪型を見たとき、私が気になるのは自分自身の印象よりも「妻にどう言われるか」です。
「似合ってる」と言ってもらえるか、それとも「ちょっと微妙」と思われるか…。(まぁ、毎回ほとんど同じ髪型ですが…)
このように、サービス後の満足度は第三者からの反応にも影響されます。
ここに気を配れる美容師は、リピート率が高くなります。
例えば「奥様に褒めてもらえるように整えておきましたよ」といった一言が、次回も指名される決め手になることがあります。(日頃のコミュニケーションの中で伝えるべきかの判断は必要です)
御社で活かせるマーケティング改善ポイント
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自社の強みを再定義し、顧客に“伝わる価値”に変えることが求められています。体験設計によって、単価・物販・リピートなど、美容院経営の基盤を強化する方法を考察します。
(1)技術力だけではない、“体験の設計”を強みにする
カットやパーマなどの技術力は美容院にとって大きな強みとなります。
ただし、その技術力が「顧客にどう届いているか」を考えることが重要です。
「カットが上手い」はあくまで美容師側の評価であって、お客様にとっての“実感”が伴わなければ意味がありません。
たとえば、「仕上がりがまとまりやすい」「娘に褒められた」「美容師さんが覚えていてくれた」など、感情や記憶に残る体験を強みにできると、価格以上の満足度になります。
(2)顧客は本当にカット技術を求めているのか?
技術さえ高めれば選ばれるでしょうか?
確かにカリスマ美容師のカット技術を求める客層も一定数存在します。
一方で、「自分のことをわかってくれている」という感覚が信頼につながる客層も多いのも事実です。
特に2回目以降の来店では、「前回どうだったか覚えてくれているか」「こちらの好みや事情を理解してくれているか」が鍵です。
カルテだけでなく、スタッフ全体で情報共有と感情共有ができているかが、体験価値を左右します。
(3)客単価UPは“物販”ではなく“信頼”の延長線上にある
客単価を増やしたいと考えたとき、多くの美容院が物販に注目します。
もちろん、シャンプーやスタイリング剤の提案は効果的ですが、売れるかどうかは「この人の提案なら買いたい」と思ってもらえるかどうかに尽きます。
つまり、物販は単なる販売ではなく、「この美容師は自分のことをわかっている」「この商品なら使いこなせそう」という体験の一部として提供されるべきです。
また、サービス提供の設計が整えば、来店頻度が伸び、次回来店までの間隔も短縮されます。
これはLTV(顧客生涯価値)を高めることにつながり、売上安定化に貢献します。
体験価値の設計が未来の売上をつくる
人口減少や競合変化の中で、美容院経営において最も重要なのは「顧客がどう感じるか」を設計する視点です。
サービスマーケティングの7Pを活用することで、技術力を活かしながら体験価値を高め、客単価・LTVを上げる戦略が可能になります。
今こそ、「通いたくなる理由」をつくる仕組みに目を向けましょう。
